理事長からのごあいさつ

理事長からのごあいさつ

 2018年11月の理事会におきまして、私が、日本財政法学会理事長に互選されました。これまでの理事長の先生方を思い浮かべますと適任かどうかわかりませんが、これも会員としての責務と思い引き受けさせて頂きました。
 日本財政法学会は1983年3月に設立され、小林直樹先生、北野弘久先生、隅野隆徳先生、吉田善明先生、碓井光明先生、甲斐素直先生の各理事長の下で活動、発展して参りました。戦後70年を過ぎて新たな展開が模索されるなか、学会活動を継続的に発展させることが私に与えられた役目であろうと考えております。幸いにも小澤隆一会員が引き続き事務局長の任にあたって下さり、事務局体制は万全であり、また、学会の要ともいえる企画委員長に伊藤悟会員が新たに就任下さり、学会の運営体制は整いました。引き続き会員のみなさまのご協力をお願いする次第です。
 学会規約第3条は、「日本国憲法の理念に立脚し、財政に関する法律問題を関連諸科学の協力を得て総合的に研究することを目的とする」とし、本学会は学会設立時から憲法、行政法、税法などの法律学のみならず、財政学、経済学、会計学、実務家など幅広い学問領域の会員から成る学際的な学会として運営して参りました。今後の運営においても、現状を取り巻く財政をめぐる法律問題に取り組むにあたり、多様な領域の会員が結集して積極的に活動していく必要があると考えます。また、少し早いのですが、学会創設40周年に向けた準備を進める必要もあると考えております。会員のみなさまのより一層のご協力を賜りたいと思います。
 しかし、私たちの意気込みは強くても、他の学問分野でも共通の悩みの種である研究者不足も相俟って、財政法学の重要性が指摘されながらもこの領域の若手研究者が育ってこないという問題があります。すでに設けられている「研究奨励賞」を広く活用し、若手支援を充実させることによって次々世代を担う若手研究者を育てて参りたいと考えます。
 現実をみると、いつの時代も「財政危機」が叫ばれていて、しかしいつも危機にあるのでそこから脱却することはできないのが当たり前であるかの錯覚に陥っています。財務省のホームページを見ても、第2次世界大戦前の危機状況と同じ状態にあります。いまこそ健全財政が実現されなければなりませんが、国の政策はその方向とはまったく逆に赤字公債を発行し続けています。現実の法制度、政治・経済の運営はあまりにも多くの大きな問題を抱えています。財政破綻を打開する方策を、私たちは財政民主主義の諸原則に基づいて取り組んでいかなければなりません。
 みなさまのご協力のもと積極的に取り組んで参りたいと考えております。最後になりましたが、学会の機関誌『財政法叢書』の刊行にあたり出版に携わる関係諸氏のご尽力に感謝しつつ、今後ともご支援を賜りたくお願い申し上げます。

日本財政法学会理事長

 

柏﨑 敏義

(東京理科大学教授)

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